マイナちゃんピオンシップ・かがわ 2022 参加レポ

2022-12-23

先日、マイナちゃんピオンシップ・かがわというイベントが開催されました。

香川県がマイナンバーカード活用のアイディアを募集し、実現可能性があるものは実証実験や社会実装に向けて協議できるというコンテストです。 最終プレゼンテーション大会では香川県の各自治体に対して直接提案を行う機会もありました。

こちらの大会の参加レポートと当日の発表で伝えきれなかった部分を補足する記事となります。

  目次

香川県へ

瀬戸大橋から

そんなわけで瀬戸大橋を渡って香川県へ向かいます。 瀬戸大橋の上部は高速道路ですが下部には鉄道が通っています。 車窓から穏やかな瀬戸内海を眺めているといつの間にか香川県に着いていました。

シンボルタワー

イベントが開催されるシンボルタワーからの眺め。高松の町並みと五色台を一望できます。

釜玉うどん

お昼はシンプルな釜玉うどんをいただき、最終プレゼンテーションに挑みます。

W3C Verifiable Credentials

資格情報(現在)

資格情報(Credential)という言葉は文脈によってはパスワードや秘密鍵という意味で使われますがここでは広い意味の方で使っています。 ポイントカードやメンバーズカードも資格情報です。 近頃はどこのお店に行っても「会員アプリをインストールしてください」と言われます。 アプリのインストールはスマホの操作権限を移譲することを意味しますので権限の許可には注意が必要です。 誰にでも無警戒にアプリをインストールさせている現状はセキュリティ上良くありませんね。

自身の能力を示すような資格情報もあります。 卒業証書や英語検定もそうですが、このあたりは大体紙です。 DXに関わる方でIPAの資格を持っている方は多いと思います。情報安全確保支援士には毎年賞状みたいな紙が送られてくるんですが捨てるわけにもいかないので迷惑です。 この資格は情報処理推進機構というところがやっているのですが、紙を送ってこられると情報処理できませんので電子化していただきたい。

資格情報(未来)

このような資格証明書は将来こうなります。 IDウォレットというひとつのアプリにさまざまな資格情報を放り込んでいきます。 このIDウォレットを使って対面・オンラインの双方で第三者に対して資格情報を示すことができます。 その為の標準仕様がW3C Verifiable Credentialsです。 遅かれ早かれ多くの資格証明書がこの仕様に準拠していくでしょう。

県に関係あるところでは、電気工事士や調理師免許は県が発行する資格証明書です。 これを電子化すると就職サイトやハローワークなどのWebサイトでインターネットを経由して第三者に資格を証明できるようになります。

そして今回私が提案するのは飼育犬の資格証明書です。 これをなぜ香川県がやるべきなのかを説明します。

スマート愛犬家シティ構想

スマート愛犬家シティ構想

香川県は実は全国で最も犬の飼育率が高い県です。 飼育率というのは100人中何頭の犬が飼われているかという指標で香川では100人中7頭の犬が登録されていています。 これは自治体が把握している数なので実際の数はもっと多いかもしれません。

香川県は国内で最も愛犬家が多い県と言えるでしょう。 東京でも犬を飼っている人はたくさん居ますがどうしても小型犬や室内犬になってしまいますので、大きな犬を飼えるというのは地方の魅力ですし、毎日規則正しく散歩するので健康にも良いです。 そして災害時に犬がいるからと避難所に行くことをためらう方が居ます。自治体が飼育犬を把握することは災害対策としても重要なことです。

世界中でVC準拠の動きは広がっていますが、飼育犬にDIDを振ってVCを発行する話はまだ聞いたことがありません。 これは世界初の試みになるでしょう。

なにができるようになるか

犬にDIDを振ってVCを発行すると具体的になにができるようになるか。

まずワクチン証明。人間の世界も大変でしたが犬の世界も大変です。 毎年受ける狂犬病ワクチン、さらに混合ワクチンまたは抗体価検査などの証明書を必要とする施設があります。 ドッグランやキャンプに行くぞーというときに紙を持っていく必要があるので大変です。 これらを電子化すればペットと泊まれる宿を予約するタイミングでワクチン証明できるようになります。

また自治体では春頃に狂犬病ワクチン接種案内のハガキを送っていますが、 これをウォレットアプリへプッシュ通知できれば経費を削減できる可能性があります。

次に補助犬認定書。補助犬というのは盲導犬、聴導犬、介助犬の総称です。 これらの犬は交通機関や飲食店に連れて入って良いことになっていますが、 施設側は認定書を持っているかを確認することがあります。 めったに無いと思いますが聞かれたら提示しないといけないので補助犬使用者は紙を持ち歩く必要があります。 これもスマートフォンに入れば負担を軽減できます。

そして里親の募集。 香川県の飼育率が最も高いのですが、実は保護犬の殺処分も一番多い県です。 これは不名誉なことなのでなんとかしなければなりません。 動物愛護センターはすでに多大な努力をされていて里親募集を行っていますが、Webサイトでの募集はどうしても見る人が限られてしまうのだと思います。 独自ウォレットに対してこんな犬が保護されていますよと写真をつけてプッシュ通知すれば保護犬を減らせるのではないか、という提案です。

自己主犬型アイデンティティ

自己主犬型アイデンティティ

Self Sovereign Identity(SSI)の特徴はいくつかありますが、 IssuerとVerifierが疎結合になっているという点は重要な要素です。 これは特に新しい考え方ではありません、 たとえば小豆島でレンタル自転車を借りるとき住所を記入して、 本人確認のために運転免許証を見せます。 この時レンタルサイクルショップは免許証を見て記載内容を確認しますが、 警察に問い合わせは行われません。 これと同様にSSIでは検証の際にIssuerに対する問い合わせを避けるべきだという考え方があります。 このトラッキングの問題を軽視するとプライバシーの考え方に分断が発生してしまいます。

もうひとつSSIには最小化の原則という考え方があります。 レンタル自転車屋の店員に年齢や性別を伝える必要はあるでしょうか? この様な不必要な情報を開示しなければならないこともマイナンバーカードの普及を阻害しています。 この問題はSelective Disclosureという方法で解決できます。

このモデルの特殊なところは Holder ≠ Subject となっているところです。 通常の本人確認書類は自身ついての属性情報を証明しますが、ここでは犬を証明しています。 これとよく似たモデルが身近にもう一つあります。母子手帳です。 母子手帳もいつかは電子化しないといけませんから、このモデルは将来必要になるはずです。

IDウォレット

IDウォレット

試しにMicrosoftさんのプラットフォームでVCを発行し、IDウォレットで表示してみました。 対面で証明書を見せる場合こんな感じのUIを見せることになります。

このカード券面のところにバーンと犬の顔写真を表示したかったのですが、 やり方がわかりませんでした、誰かご存知でしたら教えてください。 左上にある小さな画像はカードのロゴになります。犬個体の顔写真ではありません。 こういった細かい所を調整したければ独自のウォレットを開発するしか無いのかもしれません。

犬面確認AP

犬面確認AP

スマートフォンだけでなくマイナンバーカードの空き領域にもVCを入れましょう。 ほとんど誰も空き領域を活用していないのですからこれくらいのデータは入るはずです。

しかし犬の顔写真を入れるのはちょっと難しそうです、犬の写真はjpeg2000で圧縮してだいたい2kbyte程度ですがJ-LIS提供の標準APには255byteしか入らないとのことです。 ただこれはJ-LISの標準APを使った場合なので私が新たに犬面確認APを作れば入るはずです。

犬民ID登録フロー

犬面確認AP

すでに飼育犬の登録システムはあるそうなので、そことうまく連携できればよさそうですね。 公的個人認証を使って認証を行い、資格証明書を発行します。

オンボーディングとアカウントリカバリーが公的個人認証の有効な使いどころだと思っています。 逆にそれ以外のところでは注意が必要です、先のレンタル自転車のユースケースで公的個人認証は適しません。 また、4属性の取得を目的としてデジタル署名用証明書を利用するケースが見受けられますが、この様な使い方も避けたほうが良いでしょう。

私がマイナちゃんピオンだ

最優秀賞

最優秀賞をいただきました。私がマイナちゃんピオンです。

え、本当に犬にVerifiable Credentialを発行しちゃって良いの? という気持ちです。

私の発表は、副知事や各自治体のDX担当者に対して DID/SSI/VC のエッセンスをうっすら説明し、 自治体が紙で発行している各種資格情報をデジタル化するきっかけを作るねらいがありました。

香川県とは今後も引き続きこのアイディアを実現するために協力していただけるということなので、 引き続きDigital Identityを前進させるべくやっていく所存です。

イベントの運営に携わる関係者・参加者のみなさま大変お疲れ様でした。

ご意見・フィードバック

  • ニャン要素が少ないのではないか

    • 猫はワクチン接種が義務ではないため資格情報のユースケースがあまり無かった。
    • 現状自治体は猫の飼育数を把握していないので、登録制度をつくることは災害対策として有効だと思う。
  • eワンニャン霊園とは何だったのか

    • 愛犬が生きた証をブロックチェーンに記録しクラウドの海で永代供養する
    • 石を記録媒体とする方式は生きている人間の負担が大きい。
    • ブロックチェーンに魂は宿るのか?という新たな問いが生まれる。

Recent Entries

マイナちゃんピオンシップ・かがわ 2022 参加レポ

認証器としてのキーボード

Using LDAP directory for FIDO 2.0

パスポートのセキュリティ

55億円詐欺と本人確認

マイナンバーカードでPAM認証

マイナンバーカードでmacOSにログイン

マイナンバーカードでSSHする

Python Flaskでつくる LDAPログインページ

GitHub EnterpriseとLDAPで認証連携する

Hot Entries